第6回
デ・アーシヴ書店
2013/5/7 UP

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第1回 マザリーヌ書店
第2回 クーラン ダール
第3回 ミカエル・セクシク書店
第4回 オ・ザール・マジャール
第5回 書店-ギャラリー
    エマニュエル・ユタン



国立近代美術館があるポンピドゥー・センターからバスチーユ広場へ続くマレー地区は1985年にピカソ美術館が開館して以来、すっかり美術ギャラリーとモード・ブティック街に様変わりした。マレー地区を訪れる度に人波の密度が増していることに驚くが、地図を片手にお目当てのブティックを探す日本の若い世代を見かける頻度も増えている。

2002年に開店したデ・アーシヴ書店はマレー地区の中心部に位置するフラン・ブルジョワ通りとヴィエイユ・ドュ・タンプル通りが交差する界隈にあるが、手工業職人の町であったマレー地区の歴史を保存するかのように、元にあった帽子製造店の看板をそのまま残している。

店主

店主のステファン・ペリエル氏は両親もパリ6区で新刊の書店を経営していた、というパリの書店界の生え抜きである。本人も当初は新刊書の書店から始めたが、パリが美術の都であることもあって、自然と美術書専門の古書・新刊店の出店に至った。

扱いテーマは「20世紀」で、美術(絵画、彫刻、版画等)、デザイン、造形美術(家具、陶芸、ガラス等)、モード、ジュエリーと門戸は広いが、オブジェ、アクセサリーなど関連商品への多角化をせず、あくまで書籍のみの取り扱いに徹しており、書店人としての意地を垣間見ることができる。

ピエール・シャロー
(Pierre Chareau)作品集

販売は量的には絵画が多いが、特に抜きん出て売れる特定の分野はなく、すべての分野が平均して売れている。稀少本の一押し本として、建築家・デザイナー のピエール・シャロー(Pierre Chareau。1883~1950年)の作品集(1984年に出版)と、イタリアのミラノで1956年に発行された照明デザイン集「Esempi 16」などを取り出してくれたが、いずれも造形美術の分野だった。  蔵書点数は店内に4 ~5,000冊、別の場所にある倉庫に約5,000冊強を数える。

1950年代の照明デザイン集
Esempi 16

「カタログは発行していないが、当店のホームページをじっくり見て欲しい。2,300~2,400冊を紹介している」。

ホームページにアクセスしてみると、自慢するのも当然と思うほどの中味の濃さだった。表紙写真の一覧ページを見ていくだけで20世紀の美術散歩を楽しめる。

項目は美術(絵画、彫刻、版画)、造形美術、モード、ジュエリーの4部門で構成されている。「美術」は 1.アーティスト別(アルファベット順)、2. 年代別(19世紀末~1945年、第2次世界大戦後~1970年代、3. その他、4. 専門研究書・サイン入り本、「造形美術」はⅠ.1. クリエーター&デザイナー、2. 出版社・制作会社、3. 陶芸・ガラス、4. 照明、5. 総合・その他、Ⅱ.20世紀以前の造形美術、と2部門が詳細で、「モード」と「ジュエリー」は 1. クリエーター、2. 総合・その他、の構成となっている。各ぺージの表紙一覧写真をクリックすると詳細が出てきて、Eメールで注文ができるが、豊富なページをめくっているうちに、実際に店舗を訪ねて、さらなる蔵書を見てみたくなる。

店内

「これまでの書店は、来店した客が陳列品を物色して購入するのが常態だった。現在は、大都市の居住者は忙しすぎて時間がない。顧客が欲しがるものを具体的に提供していくことが肝心だ。そのためには、これからの古書店は第1に専門化、第2に専門化、第3に専門化だ」とまで言い切る。以前はルネッサンス時代の書物も扱っていたが、あまり詳しい知識がなく、顧客の質問に答えられないため、扱いをやめた、とも言う。 

顧客は35~60歳が主体で、ほとんどが常連客となっている。美術館キューレター、美術鑑定人、ドキュメンタリスト、ギャラリーやジュエリー店の経営者などの美術関係者と各分野の作家・クリエイターが主体で、コレクターの来店も増えている。顧客の3分の2はフランス国内から、国外はアメリカ、ブラジル、ベルギー、スイスがめぼしい国となっている。

店内

フランスは社会保障費が高すぎるなどで人件費が高く、その上にやる気があって有能な店員を見つけることが難しいので、すべての業務を一人で切り回さざるをえないのが悩みとこぼすが、店を訪れるアーティストがこんな作品を造っている、と実感できるのが楽しみと語る。

美術関係者やアーティストとの対話から顧客の嗜好や時代の流れの変化を感じ取る。例えば、15年前までは1930年代のものが人気だったが、現在は第2次世界大戦後の抽象絵画に関する美術書、ことに1950年代、次いで60年代~70年代が売れ筋となっている。

取材中も顧客が2人来店していたが、「こういうものがないか」、「この作家の作品は」と尋ねると、店主が棚から抜き取る、という息があった信頼関係を感じる。美術関係者とアーティストの双方から頼りにされ、両者が出会い、議論をし、刺激しあう場所となっている。


店名

Librairie des Archives

lib-des-archives

住所

83 rue Vieille du Temple 75003 Paris

電話

01 42 72 13 58

HP

www.librairiedesarchives.com

店主

Stefan PERRIER

設立年

2002年

従業員

1人


 

 広畠輝治   ブログ : 「広畠輝治の邪馬台国吉備・狗奴国大和説」

1948年1月
1980年
1988年


2002年4月

2009年1月

横浜に生まれる
から在仏ジャーナリスト
にプレス・ヒロハタ社設立
主に日経新聞社グループと電通向けに記事・レポート配信とコーディネート。 やきものネット・パリ通信員。
「邪馬台国 岡山・吉備説から見る古代日本の成立」(制作‐コエランス酉福ギャラリー、発行‐神無書房)を出版。
「邪馬台国吉備説 神話編」(制作‐酉福ギャラリー、発行‐神無書房)を出版。

 

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